つかこうへい 代表作のいいところは何か?読みたい戯曲オススメ五選と作品一覧

つかこうへいは、1970年代以降の演劇界の一世を風靡した劇作家・演出家。

つかこうへいの戯曲は情熱的なせりふ回しとスピード感で、多くの俳優や顧客の心をつかんできました。

今回は、そんなつかこうへいさんの代表作、つかこうへいの作品の(「つか作品」と呼ばれます)の魅力を詳しくお伝えしつつ

そして、初心者にもおすすめの戯曲をご紹介します。

1.つかこうへい代表作のいいところは何?代表作おすすめ五選

つかこうへいさんの作品、とりわけ代表作のいいところは、

1つにはテンションの高さ

2つには、人間に対する愛憎入り混じったようなセリフ

3つ目に、人間の狂気

といったところでしょうか。

あとは、芝居を作る過程で、台本ではなく歌舞伎と同じ「口立て」(くちだて)で作っていく、というこころです。

①つかこうへい代表作 おすすめ五選

つかこうへいの作品は、読んでも演じても“熱”が伝わる傑作ばかり。


ここでは、その中でも特に読みやすく、また上演向きとしても評価の高い5作品をご紹介します。


「つか作品に触れてみたい」「何から読めばいいの?」という方にもおすすめのラインナップです。

1.熱海殺人事件
2.蒲田行進曲
3.初級革命講座 飛竜伝
4.広島に原爆を落とす日
5.娘におくる祖国

です。

➁口立て(くちだて)とは

つかこうへいさんといえば、独自の演出スタイル「口立て(くちだて)」。

おすすめ作品の紹介に入る前に、口立て(くちだて)についてもう少し詳しく書いておきます。

「口立て」は、役者さんに台本を渡してセリフを覚えさせるやり方とは大きく違います。

前日までに台本は渡され、俳優さんたちが事前に覚えるのですが

そのあと稽古に入ると、実際に、つかこうへいさんが役者さんに俳優さんに対して、

「このように言ってみて」「こう言って」などその場で、直接役者さんとの対話形式

指示をだして、セリフを覚えるように仕向けたりするやり方です。

これがつかこうへいさんの演出のやりかた、「口立て」です。

また、つかこうへいさんに育てられた大物の俳優の一人、風間杜夫さん

風間さんは、つかこうへいさんの「口立て」について次のように語っています。

「つかこうへいさんは、『芸人というのは、思いもよらない声を出すんだぞ!』

と言ってたんです。つかさんがまず、演出として正解の声を出すんです。

そして、私たち芸人は常にその「音マネ」をしていたんです。」

結果的に、4割ぐらいは台本通りということですが、6割ぐらいはこの「口立て」によってセリフが演出されます。

つまり稽古に出るたびに、セリフが大幅に変わっていくのです。

つかさんが、芝居の流れを見ながら頭に浮かんだ台詞を口頭で伝え、役者はその台詞を瞬時に暗記して復唱し芝居を続ける。

それって大変なんじゃん!

たしかにそうです。

一方通行ではなく、双方向な、インタラクティブな稽古だと思います。

なんだか現代的、というか、当時からすると、先進的ですよね!

もしかして、舞台の初日と、最終日(楽日)では、演出が違う、セリフが違う、なんてことがあったのではないでしょうか?

つかこうへいさんは、どうやって、そうした演出のやり方を習得したのでしょう?

次の章では、つかこうへいさんのプロフィール、経歴、どんな演出家であったのか、

もう少し具体的に見ていきたいと思います。

2.つかこうへい代表作 オススメ五選の魅力は?

①つかこうへい代表作 『熱海殺人事件』

つかこうへいの代表作ともいえる名作です。

どんなあらすじなのかな?

クセの強い敏腕部長刑事の木村。地方から赴任してきた新米刑事の熊田

木村の愛人である婦人警部補 ハナ子。

この三人が恋人殺しをした大山金太郎を「一流の犯人」に育てる、というちょっと異色のストーリー。

おすすめのポイントは?


はい、こちらつかこうへいの代名詞ともいえる一作で、1973年に文学座アトリエで初演されました。

岸田國士戯曲賞を受賞しました。


会話劇のテンポ、濃密な人間関係、笑いと狂気の紙一重——すべてが詰まっています。

登場人物はわずか4人。観客の心を握り潰すような緊迫感を生み出せるのは、つか作品ならでは。


初演から50年経ってもなお、上演され続ける理由が、読むと分かります。

ほぼセリフだけで展開される濃密な会話劇で、舞台装置に頼らない分、演者の力量が試されるところがあります。


刑事の葛藤や狂気が描かれた本作は、演技の力で空間を支配したい人にうってつけ


高校演劇でも人気が高く、“つか作品”入門にも最適です。

 

➁蒲田行進曲

映画化もされた代表作。スター俳優・銀ちゃんと周囲の人間模様を、笑いと涙を交えて描きます。
個性的で“キャラが立った”セリフまわしが魅力で、読んでも面白く、観ても心を動かされる作品です。


エンタメ性が高く、観客との距離を一気に縮められる舞台として人気。

【あらすじ・ライト版】
スター俳優・銀ちゃんと彼に振り回される仲間たちの、笑って泣ける人間ドラマ。

スター俳優の銀ちゃんと大部屋役者のヤス。

二人役者としての格が違いながらも、何故がいつも一緒につるむ。

特にヤスの銀ちゃんへの尽くしっぷりはすごい。

ある日、銀ちゃんがヤスのもとに、恋人で女優の小夏を連れてきます。

銀ちゃんは、ヤスに大きな頼み事をします。それは

「出世のために自分の子を身ごもった小夏と結婚してくれないか」というものです。

 ヤスは憧れの女優、小夏と結婚し、小夏のお腹の子の父親になることになったわけですが、

出産費用を稼ごうと、危険な撮影をこなしていくのです。

めずらしい展開だね

銀ちゃんというキャラに振り回されていく人間模様が見どころです。

『蒲田行進曲』は、キャラ立ち抜群、セリフ回しは疾走感満載の作品。

劇団「つかこうへい事務所」によって紀伊国屋ホールで初演されました。

そのあと、つかこうへい自身によって小説化もされました。

舞台は、キャストを何度も変えて上演され、深作欣二監督によって映画化もされた本作は、小説を“読んでるだけで舞台が浮かぶような”代表格。

エンタメ性と人間の泥臭さを同時に味わえる、つかこうへいの真骨頂、といえるでしょう。

③初級革命講座 飛竜伝

元過激派の主人公・熊田と、かつてのライバルである元機動隊員・山崎。

革命の夢に破れた熊田のもとに、かつての闘志を取り戻させようと山崎が訪ねてくる。

ふたりの男の会話を通じて、若者たちの”革命”とは何だったのかを問いかける物語。

かつて“伝説の石投げ”で名を馳せた男・熊田が、過去と再び向き合う物語ね。どんなところがおすすめなのかしら?

つかこうへい作品の中でも、特に政治的なメッセージと青洲の葛藤が絡み合う”熱さ”に満ちた一本なのです。

なので、若い俳優の全力演技でこそ生きる作品として、今なお多くの演出家に選ばれているところでしょうか。

若者の理想と現実、社会への怒りの希望が、濃密なセリフの応酬で描かれており、

読んでも、観てもエネルギーを浴びるような感覚になります。

”飛竜”という石に象徴される”伝説の一投”が何を意味するのか、登場人物たちの対話が胸に迫る、演劇ファン必読の傑作です。

④広島に原爆を落とす日

このタイトルだけで、「え!?」と思わせる破壊力。

とても大事な重いテーマを扱いながらも、つかこうへい独自の視点で展開される意欲作。

在日韓国人・恨一郎が、広島への原爆投下という決断に至るまでの物語。

しかしそこは、愛する女性・百合子の住む場所だった。

衝撃の設定で展開する愛と葛藤の物語になります。

しかし、この物語の中身は、国家、アイデンティティ、愛、裏切り…という

壮大なテーマを一気に抱える文学的なボム(bomb)と言えるでしょう。

つかこうへいが、”在日”という立場から感じた日本と韓国、両国への感情を、フィクションの中で鋭く投影しています。

“戦争もの”ではなく、“魂の恋愛劇”でもある。

つかの怒りと愛が交錯し、読む者の価値観を揺さぶります。


演じる側にとっても、極限の覚悟を問われる作品。 読むにも、相当な覚悟で。

立させた、つか作品の奥深さを知るうえでも重要な作品です。

⑤娘に贈る祖国

在日韓国人である著者が、自身のアイデンティティや娘への想いを綴った、エッセイです。

ん、在日? 娘?

そうです。つかさんは実は日本で生まれ育ちますが、血筋、国籍は韓国の方なのです。

お嬢さんはなんと、愛原実花さん。(元宝塚歌劇団雪組トップ娘役)

☆彡

さて、在日韓国人2世のつかこうへいさん。

悲しい事に、当時の日本では特に、差別を恐れて在日韓国人ということを隠す事が多かったのが日本の現実。

しかし、つかこうへいはこの本で、自分が在日韓国人だとはっきり世間に公表しました。

つかこうへいは、舞台上映のために何度か韓国を訪れますが、韓国にいくと、その現地のことばを話せないので、差別的なことを受けることになります。

韓国の文化が人に触れながら、自問自答を繰り返すのです。


これは戯曲ではなくエッセイですが、つかの原点がここにあるのでオススメです。

「祖国とは何か」を語る一文一文が、生き様そのもの。

若い世代や、自分のルーツに悩む人にも強く響く一冊です。

みな子よ、きっと祖国とは、お前の美しさのことです。ママの二心のないやさしさのことです。パパがママを愛しく思う、その暑さの中に国はあるのです。二人がお前をかけがえなく思うまなざしの中に、祖国はあるのです。

(『娘に語る祖国』から引用)

つかさんの愛娘、菅原実花さんは、生まれながらに母親方の日本国籍のようですが、

この本に於いて、アイデンティティ―とは、という思いについても語っているのですね。

以上 オススメの五選をまとめてきました。

戯曲=舞台で演じるもの…と思われがちですが、つか作品は文章の勢いだけでも十分に人の心を動かす魅力を持っています。

まずは小説1本を、気軽に読んでみるだけでも、つかこうへいの言葉の力に引き込まれるはずです。

3.つかこうへい代表作どこで読める?戯曲の購入・図書館・脚本の探し方

つかこうへい作品を「読んでみたい」「探している」という方に向けて、脚本や戯曲に出会える主な方法をご紹介しています。

1.書店や通販サイトで書籍を購入する

つかこうへいの代表作は多くが文庫本として刊行されており、書店や通販サイトで購入できます。

特に以下のレーベルでは、定番作品を中心に入手が可能です。

●新潮文庫

●角川文庫

●つかこうへい全集(晶文社)

『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』『飛竜伝』などは比較的入手しやすく、名作をじっくり読みたい方にはおすすめです。

Amazonや楽天ブックスなどのオンライン書店でも購入できます。

 

2.図書館を活用して読む

地域の図書館や大学図書館などでも、多くの戯曲が所蔵されています。

作品によっては舞台パンフフレットや批評書も見つかるかもしれません。

3.無料で脚本が読める公式PDFも!

実は、つかこうへい事務所の関係サイトでは、脚本が公式にPDFで無料公開されています。

☆彡演劇人つかこうへい公式 脚本PDF公開ページはこちら。
つかこうへい演劇館 | TRENDSHARE(トレンドシェア)

ここでは、以下のような作品が読めます。

「熱海殺人事件」(初期バージョン)

「飛竜伝」(黒木メイサ主演版など)

その他、代表作の一部。

 

4.つかこうへい作品一覧 年代順

つかこうへい作品ですが、

つかこうへい作品は今も多くの劇団やプロデューサーによって上演されています。

もしタイミングが合えば、
舞台でしか味わえない「間」「熱」「言葉の強度」を体験することは、作品理解の手助けにもなります。

ここでは一覧表にしてまとめておきます。

発表年と作品名
1975年 『熱海殺人事件』
1976年 『小説熱海殺人事件』角川文庫 『戦争で死ねなかったお父さんのために』
1977年 『初級革命講座飛龍伝』角川文庫
『弁護士バイロン』
『あえてブス殺しの汚名をきて』
1978年
1979年 『ジャイアンツは負けない』角川文庫
『いつも心に太陽を』
1980年
1981年 『傷つくことだけ上手になって』
『蒲田行進曲』
『つかこうへいによるつかこうへいの世界』
1982年 『戯曲蒲田行進曲』
『シナリオ蒲田行進曲』角川文庫
『つかへい犯科帳』
『つかへい腹黒日記』
『定本ヒモのはなし(出発)』
『寝盗られ宗介』
『つか版・忠臣蔵』
1983年 『つかへい腹黒日記 part2』
『青春かけおち篇』
『この愛の物語』
1984年 『つか版・女大学』
『ストリッパー物語』
『ハゲ・デブ殺人事件』
8月『嫁ぐ日’84』
1985年 『つか版・男の冠婚葬祭入門』
『二代目はクリスチャン』角川文庫
『シナリオ二代目はクリスチャン』角川文庫
『井戸のある街 第1話』 『国ゆたかにして義を忘れ』
1986年 『シナリオ熱海殺人事件』角川文庫
『シナリオ青春かけおち篇』角川文庫
『広島に原爆を落とす日』
『長島茂雄殺人事件 ジンギスカンの謎』
『スター誕生』
『青春父さんの恋物語』改題『ロマンス』
1987年 『銀ちゃんが、ゆく 蒲田行進曲完結篇』
『かまっておんど』
『こころくんこころさん』
『弟よ!』
『ふしぎなクリスマスケーキ』
『つかこうへい戯曲シナリオ作品集』全4巻 白水社
1988年 『井戸のある街 第2話』
『菜の花郵便局 大人と子供のための童話』
『幕末純情伝 竜馬を斬った女』
1989年 『つかへい腹黒日記 part3』
『井戸のある街 第3話』
『戯曲幕末純情伝』
『愛人刑事』
『現代文学の無視できない10人 インタビュー』
1990年 『飛龍伝’90 殺戮の秋』
『つかこうへい劇場(1)青春』
『娘に語る祖国』
1991年 『幕末純情伝』
『竜馬伝 野望篇』
『竜馬伝 青春篇』
『邪馬台国の謎 演劇入門』
戯曲『リング・リング・リング 女子プロレスリング純情物語』
1992年 『熱海殺人事件 ザ・ロンゲスト・スプリング 決定版』
『飛龍伝 ある機動隊員の愛の記録 決定版』
『明日、恋する貴方に』
1993年 『竜馬伝 決死篇』
小説『リング・リング・リング 女子プロレスリング純情物語』
『リング・リング・リング 涙のチャンピオンベルト フォト・シナリオ』
1994年 『銀幕の果てに』 『つかこうへい傑作選』全7巻 メディアファクトリー
1995年 『女優になるための36章』改題『あなたも女優になろう』
1996年 『熱海殺人事件売春捜査官』
『人は幸せになるために生まれてきたのです』
『薔薇ホテル』
『あるキャッチボール屋さんの悲劇 井戸のある街その後』角川文庫
1997年 『飛龍伝 神林美智子の生涯』
『寝盗られ宗介’96・ロマンス’97』
『娘に語る祖国 「満州駅伝」-従軍慰安婦編』
『高校生のための実践演劇講座』全3巻
1998年 『つかこうへい’98戯曲集』
1999年 『戯曲 新・幕末純情伝』
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年 『つかこうへいの新世界 htwi:art visual「ヒッティ」』
2006年 『つか版誰がために鐘は鳴る』
(ホンシェルジュ サイトより)

同じ作品でもバージョンを変えたりして、何度も発表されていますね!

5.つかこうへい代表作のいいところは?まとめ

以上、つかこうへいのことばには、読む人・演じる人の”何か”を揺さぶる力があります。

たった一言のセリフに胸をつかれたい、知らなかった自分の感情に出会ったり。

そんな体験が、つかこうへいの代表作ふくむ作品のかずかずにはあります。

つかこうへいの代表作を、初めて名前を知った人も、どこかで聞いたことがある方も、

気になる作品がありましたら、是非ページを開いてみてください。

舞台の熱気や、つかこうへいのまっすぐな思いが、きっと心に残るはずです。

 

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