「熱く、まっすぐに生きろ。」そんな言葉が似合う劇作家・つかこうへい。
1970年代以降の演劇界に大きな影響を与え、その独自の文体と演出スタイルは、
今なお多くの演劇人に影響を与え続けています。
今回は代表作となる戯曲、心を揺さぶる名言の数々、知られざる若い頃のエピソード、
そして彼の厳しくも温かい指導で育った俳優たちをご紹介。
今は亡き情熱の演出家・つかこうへいの魅力を、作品と人柄の両面から紐解いていきます。
1.つかこうへいの戯曲を紹介
①つかこうへい戯曲 これまでの代表作
代表昨に「熱海殺人事件」や「飛龍伝」などがあります。
スピード感あふれる台詞回しと、社会性のあるテーマで観客を魅了してきました。
1974年に、つかこうへいが25歳のとき、「つかこうへい劇団」を設立し、
1974年に「熱海殺人事件」で岸田國士戯曲賞を受賞し、当時の若手俳優たちにとって憧れの存在に。
「熱海殺人事件」が出世作となり、いずれは愛娘の愛原実花さんを出演させるほどです。
ほかに、ストリッパー物語、蒲田行進曲があり戯曲『飛龍伝’90 殺戮の秋』も。
「熱海殺人事件」、「飛竜伝」、「蒲田行進曲」などは映画にもなっています。
飛龍伝’90 『殺戮の秋』については、ヒロイン役の女優は(以下敬称略)
初代は、富田靖子、2代目で牧瀬里穂、3代目石田ひかり、
4代目が内田有紀、5代目で広末涼子、6代目に黒木メイサ、7代目は桐谷美玲。
飛龍伝2020は、欅坂47の菅井由香ですね。
なんとシリーズが多いことでしょう!
女優さんをかえて、何度も作品が上映されているとは驚きました。
俳優の風間杜夫(かざま・もりお)さんは、つかこうへいさん仰ってたことを次のように話しています。
「『役者が変わるとキャラが変わる』と、つかこうへいさんは考えていました」
つかこうへいさんが目をつけ、彼の演劇メソッドにそって舞台に立たせると、
役者だけでなく、もとモデルさんやアイドルであっても、
誰もが役者として開眼し、大きな転機となっているようです。
➁つかこうへいの戯曲は今後も生き続ける
2026年2月、紀伊國屋ホールで「熱海殺人事件」と「売春捜査官」が二本立てで再演される予定ですが
つか作品の魅力は、今なお色あせることがありませんね!
つかこうへいさん劇団で、初期の頃は、劇団に所属していた風間杜夫や平田満、三浦洋一、
そして根岸季衣などが、またたく間に役者として花開き、映画やテレビへと巣立っていくわけですが、
後期に向けては、今でも絶好調の阿部寛が「熱海殺人事件」でゲイの刑事部長役を、
(もともとゲイの役ではないのですが、そのように変更した)
元SMAPの草彅剛が「蒲田行進曲」のヤスを演じたり、とさまざまです。
同じ「熱海殺人事件」でも、時代にあった内容を魅せられるよう
配役をゲイにしたてたり、いろいろと工夫をされていますね
作品の中だけではなく、演出やインタビュー、エッセイなどでも数多くの名言を残しているつかこうへい。
彼のことばには、人生の痛みや希望、人間の本質を射抜く力があります。
2.つかこうへい 名言とは?心に響く言葉たち
作品の中だけではなく、演出やインタビュー、エッセイなどでも数多くの名言を残しているつかこうへい。
彼のことばには、人生の痛みや希望、人間の本質を射抜く力があります。
さて、つかこうへいさんがよく言うことば、どんなものがあったのでしょう?
今は亡きつかこうへいさん。
過去のことばを調べていくと、かっこよすぎて、演劇のセリフなのだろうか?
それともご本人のことばなのか、と思う事もありますが
どちらにしてもかっこいいわけです。
今回は、ご本人おっしゃったことば、それを纏めていきたいと思います。
①つかこうへいさん名言1 「二流ほど威張りたがる」
こちらは、どの俳優さんが言われたのか、という記録はないです。
だって、あまり言いたくないですよね、自分が二流だと思われていたとしたら..
この言葉の意味を考えていくと、
まだこれからの人(芸能界でいえば、本人が思うように売れていない方)に限って、
自分は頑張ってる過程、努力をみとめてほしい、つまり承認欲求が大きい。
承認欲求が多ければ多いほど、自分をどうしても大きくみせたくなる、みせてしまう、
その結果威張ってしまう。
つかこうへいさんは、このようにして、当時はまだまだの俳優や
モデル出身の人でも奮い立たせて、目覚めさせてきたんだと言えます。
➁つかこうへい名言 2 「それでも人を愛したり愛おしく思っていかなくちゃ」
「人を愛したり信じたりすることは今いちばん惨めな勇気を必要としている時代。
それでも人を愛したり愛おしく思っていかなくちゃいけない」(「あの人に会いたい」より)
なんだか深いですね。
「人を愛したり、信じることは惨めな勇気」ここにどんな意味しているのでしょうか?
なにかとんでもない新しいことにチャレンジする事に比べれば、
人を愛したり、信じることは、一見当たり前のようなことですよね。
人間の根源にあたる部分に対して、勇気がいる時代」と言い切ったのは、何かに失望しているからなのか、
それとも、勇気をもって、自分の中にある壁を取り払おう、という意味もあるのでしょうか。
これは真の意味は、もちろん、つかこうへいさんの中にあります。
どの様に受け取るかは、私たち次第、という事もあると思います。
ただ、2025年という現代を迎える私たちにとって、
戦争各地で紛争がやまなかったり、貿易戦争ですら起こりそうであったり、
AIの発達が著しく、人間は人を信じる言葉むずかしくなっている、
それでも愛していかなければならない。
これはまるで未来を予言するような言葉になっていると、私は思います。
③ つかこうへい名言3「俺たちは賭けに勝ったな」阿部寛
売れっ子俳優、阿部寛さんもまた、つかこうへいさんに魅了され、引き抜かれた方の一人です。
つかさんの作品「熱海殺人事件」で、ゲイの役を演じたことで、大ブレイクします。
もともとの作品で、ゲイの人物ではなかったのですが、面白くするために、つかさんが工夫して変えたそうです。
ゲイ役をつとめるにあたり、つかこうへいさんに厳しいことをと言われながら
毎日厳しい稽古にはげみました。
「もっと狂え!」
稽古に通うなからで、毎日「もうできません」と言って帰ろうと思っていたようですが、
そうはならなかったのです。
つかこうへいさんに出会うまでの阿部寛さんは、
もともとモデルご出身ということもあり、かっこよいい外見やスタイルから、二枚目役に起用されることがほとんど。
演技が評価されることはなかなかなかったようです。
さらに、阿部さんよりも若年のモデルさんに二枚目役が流れてしまうこともあり
「このままでは俳優としてはやっていけない、終わりがちかいかも。」と阿部さんはと思っていたそうです。
ただ、つかこうへいさんとの出会いで、「熱海殺人事件」に出演がきまり、
稽古を成し遂げていきながら、
実際に公演がはじまると、観客たちは、一皮も二皮もむけた阿部寛さんに出会うことになります。
後日わかったことでが、実は、つかこうへいさんも、阿部寛さんを起用することについては、なんとも花開くか、わからいので周囲には反対されていたそうです。
周囲の大反対を押し切って、阿部さんと成功をおさめたつかこうへいさんは、
その思いを次のように語っておられます。
「俺たちは賭けに勝ったな」(オンラインより)
この言葉を、つかこうへいさんから聞く事で、
阿部寛さんも、とても嬉しく、
「私のは俳優の人生は今始まったといってもいい」、と語ったそうです。
確かに、今となっての阿部寛さんは、外見とは裏腹なコミカルな役もとても様になっていて、名演技俳優ですよね!
「賭けに出る」という言葉に変わっていますが、ここにも勇気があったはずです。
つかこうへいさんが、勇気を出して阿部さんを信じた、
阿部寛さんも勇気をもって、つかこうへいさんを信じ、お互いに愛で繋がっていた。
ここに、阿部寛さんの成功を、つかこうへいさんが支えてきた事の成功が見られると思います。
3.つかこうへい 若い頃
さて、「つかこうへい」という名前は、つかさんが慶應義塾大学の文学部の在籍時に、
三田詩人というクラブに所属したときにつけたペンネームだそうです。
さて、この「つかこうへい」というのは、「いつか公平に」という在日差別に対する強い思いが込められていると伝えられています。

在日?
そうなんです。
つかこうへいさんの本名は金 峰雄(キム・ボンウン)
生まれは1948年の4月24日
旧福岡県嘉穂郡嘉穂町に在日韓国人2世としてうまれます。
日本名は金原峰雄(かねはら・みつお)さんです。
帰化はされてませんが、家族の将来のために夫婦別姓でご結婚され、
愛原実花(元宝塚歌劇団雪組トップ娘役)は、誕生した時から、母方の日本の国籍なのです。
また、つかさんは、慶應大学は中退され、早稲田大学で劇団をつくることになります。
その劇団がきっかけとなって、そこで将来の多くの有名俳優を輩出していくことになるのです。
4. つかこうへい 演出指導に影響をうけた俳優たち
つかこうへいさんの舞台に参加し、大きく飛躍した俳優は数多くいます。
これまでに語り切れていない方については、以下にまとめていきます。
代表的な名前としては、風間杜夫さん、平田満さん、根岸季衣さんなどが挙げられるでしょう。
風間杜夫さんは、劇団の傾向場でつかこうへいさんに、「お前の芝居には垢がついている」
と言われたことがきっかけで、つかこうへいさんの演出の教えにはまっていきます。
他に内田有紀さん。
内田有紀さんも歌手活動を休止して、舞台励んでいる際「なぜ肌を黒いのだ、照明があたらないだろう!」とつかこうへいさんに、日焼けしていることを咎められたりもしたそうです。
それを乗り越えての今です。
確かに内田有紀さんも、その美しさから、誰もが羨むような役柄が多かったですが、
「最後から二番目の恋」あたりから、精神疾患のある女性をとても上手に、味のある演技でなさっています。
つかこうへいさんのおかげなのでしょう。
他に、石田ひかりさん、石原さとみさん、広末涼子さん、小西真奈美さん、黒谷友香さん、
石原良純さん、生駒直子さん、稲垣吾郎さん、酒井敏也さん、草彅さん。
気になる方は調べてみてくださいね。
また、つか作品をきっかけに演劇の道へ進んだ若手俳優も多く
2026年の再演に向けて、再び注目が集まっています。つかこうへいが残した「人を育てる力」は、今でも脈々と息づいているんですね!
コメント