全人教育とは?簡単に述べると?意味や意義をわかりやすく、小原圀芳が説いた理由も!

全人教育とは、一言でいえば 「人間を丸ごと育てる教育」 のことです。


点数や偏差値だけでなく、心・体・感性・社会性など、人としての幅広い力をバランスよく伸ばすことを目指します。

この考え方を日本で広めたのが、玉川学園の創設者・小原國芳(おばら くによし)です。

彼は「学力だけの教育では社会はよくならない」と強く主張しました。

その背景には、大正から昭和初期の教育のあり方への疑問、そして子ども一人ひとりを大切にしたいという信念がありました。

この記事では、小原國芳が説いた「全人教育」とは何か、その理由や現代の子育てに活どのような意味を持つのか」をできるだけわかりやすく、纏めていきたいと思います。

1. 全人教育とは?意味をわかりやすく解説

「全人教育」とは、文字どおりにいえば、「人間を全体として育てる教育」です。

知識を詰め込むことだけに偏らず、「知・徳・体」をバランスよく育成することを目指している、ということは聞きなれているかもしれません。

たとえば、

知(頭脳や学力)

徳(道徳心や人格、心のあり方)

体(健康・体力・生活力)

を調和的に育てる、人としての土台を築く、ということは日本でなじみのある言葉でありますが、それだけではないのです。

真 (しん:学問)教育とは詰め込む量でなくて学習意欲を燃えさすこと
善 (ぜん:道徳)人間人格の価値を万人が知る必要がある
美 (び:芸術)
聖  (聖:宗教)
健   (けん:身体)
富 (ふ:生活)

の6つの価値を調和的に想像するのが、人間にとって豊でバランスがとれていく人間形成になる、ということです。

昭和初期の日本では、近代化と戦争の時代背景の中で「学力や軍事的技能」に偏った教育が重視される傾向が強まりました。

その反動として、「人間らしさを忘れない教育」を求める声が高まっていった。

小原國芳(おばら・くによし)の全人教育が注目されていったのです。

小原國芳については詳しくは後述します。

つまり全人教育は、「点数を取れる子ども」ではなく「社会で自分らしく生き、周りと協力できる人」を育てようとする教育理念だといえるでしょう。

 

2.全人教育を小原圀芳が説いた理由

全人教育を説いたのは小原國芳(おばら・くによし)です。

小原国芳は(1887–1977年を生きた方で、これは日本の年号でいえば、明治20年~昭和52年です。

澤柳政太郎(さわやなぎ・まさたろう)という、成城学園の創設者で新教育運動の旗手であった方のの推薦を受け、成城学園の主事を務めた後、自ら玉川学園を創設しました。

👉澤柳政太郎がどんな人物か、についてはこちらの記事で詳しく書いてあります。

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小原國芳が全人教育を重視したのには、いくつかの背景があります。

まず、小原は「学力だけの人間」が戦争や社会問題を引き起こす姿を目の当たりにしました。

高度な知識を持ちながらも、人間性や倫理を欠いた人材は、社会にとって危うい存在になり得ると考えたのです。

また、小原は教育を「一部のエリートのため」ではなく、「すべての子どもを対象とするもの」として捉えました。

そのため、農業体験・芸術教育・生活実習などを取り入れ、「体験を通じて心身を育てる学び」を玉川学園で実践していきます。

さらに小原は、子どもを「未来の社会の担い手」として尊重しました。つまり「国家のための人材育成」ではなく、「一人ひとりが幸せに生きられる教育」を基盤に据えたのです。

こうした考えが全人教育という言葉に結実しました。

全人教育が広まったキッカケは、八大教育主張講演会

全人教育は、1921(大正10)年、小原國芳が34歳の頃、東京高等師範学校(現在の筑波大学)の大講堂で、八大教育主張講演会で発表したことがきっかけです。

この講演会に学者はおらず、教育現場の教員で、働き盛りの30代から40代の人材がアつあっての講演会だったのです。

小原圀芳は、鹿児島県に生まれ、電信技手として働いた後に、鹿児島の師範学校に進学、広島師範学校を卒業後は、京都帝国大学哲学科を卒業。

現場のたたき上げの仕事も経験してから勉学にも励んでこられた、努力家の教員であったのです。

この講演会の2年前(1919年=大正8年)からは、澤柳政太郎の招きがあり、成城学園の主事を担当。

この講演会の後は、成城学園の教授にもなりながら、自身で学校をつくるなら、全人教育が出来る場所がいい、ということでの「ゆめの学校」を描きつづけ、

それが、実現に向かっていき、昭和4年には、成城からは独立して、夢の学校は玉川学園となって開校されるのです。

 

全人教育はどのように受け継がれている?

小原國芳の教育の志は、長男の小原哲郎(おばら・てつろう)にも受け継がれました。

小原哲郎は慶應義塾大学を卒業後、父の理念を支える形で玉川学園の運営に携わります。

慶應義塾といえば、福澤諭吉の「独立自尊」の精神を掲げた教育で知られています。

小原哲郎が慶應で学んだことは、父の全人教育の理念と響き合い、玉川学園の教育をより現代的に発展させる力になったと考えられます。

つまり、小原國芳の全人教育=人間全体を育てること と、

福澤諭吉の独立自尊=一人ひとりが自立した人間として社会に関わること は、表裏一体の価値観だといえるでしょう。

この背景を知ると、玉川学園が1つの学校である、ということにとどまらず、日本の教育思想をつなぐ大きな流れの中にあることが見えてきます。

3.全人教育の現代における意義

では、この全人教育は現代にどんな意味を持つのでしょうか。

いまのところ、皆さんはどう思われているでしょうか?

全人教育を、学校においてどのように考えていくか

一つは、AIやグローバル化が進む時代において「知識だけでは不十分」だという点です。今の子どもたちに必要なのは、正解を暗記する力よりも、他者と協力しながら問題を解決する力や、自分の感性を発揮する力です。

また、学力偏重に対する反省は、現代でも進学競争の中で繰り返し語られるテーマです。

小原國芳が説いた「人間全体を育てる」という理念は、受験や資格だけでは測れない力の重要性を、私たちに改めて思い出させてくれます。

さらに、玉川学園が今も実践しているように、芸術・農業・語学など幅広い体験を通じて育った人材は、社会に出ても柔軟で創造的な働きをしています。これは教育現場だけでなく、家庭や子育てにもヒントを与えてくれる考え方です。

全人教育を家庭で実践するには

小原國芳の全人教育の考え方は、学校教育だけでなく家庭にも応用できます。

子どもが、本物に触れさせる経験を、必要な段階でいかに行っていけるか、というところです。

小原國芳は、本物に触れる大切さを、次のように語っています。

さまざまの問題の第一人者に触れるということ、生きた偉人の謦咳に接することから、ホントの物が与えられると思う。一体、世間の学校の先生方は、あまり、自分自身が生徒に与えようとし過ぎる。世間にはいくらも偉い人がおるものをナゼ、そのえらい人に来て貰って、いいものを吸収するように努めないんだろう。
つぎつぎに世界の第一人者に来て貰おうよ接することによって、お互いが刺激され、貴い感化を受け、人間内容が豊かになり高められ清められていくのだ。

『小原國芳全集14 塾生に告ぐ』(玉川大学出版部発行)

 

たとえば親として「子どもの学力」ばかりを気にしてしまうと、知らず知らずのうちに「勉強ができる=良い子」と思い込んでしまうことがあります。しかし全人教育の視点から見れば、

  • 家の手伝いをする

  • 友だちと仲良く遊ぶ

  • 自然の中で体を動かす

  • 本や音楽、芸術に親しむ

これらも立派な、「本物に触れる学び」に繋がっていくのです。

小さな体験や遊びの中から、自ら意欲のある子どもは人間性を磨いていきます。

シンプルなことでは、親御さんが「点数」だけにとらわれず、「今日はこんなことを工夫したね」「友だちに優しくできたね」と声をかけることは、子どもの自己肯定感を育て、まさに全人教育につながっていく、というわけですね。

玉川学園での実践

小原圀芳が創設した玉川学園では、全人教育にもどついてた教育が行われているわけですが、実際にはどうなのか、というのはちょっと気になりますね。

玉川学園では、国際バカロレアに認定を受け、世界基準のプログラムが取り入れられています。

国際バカロレア認定校あれば、国際的な視野で行動するための能力やスキルを育むとともに、世界中の大学に進学する際に使える入学資格(国際バカロレア資格)を得ることで、大学進学へのルートを確保することが可能となります。

実際に、私が玉川学園初等部の説明会に出席したときのことになりますが、

高校1年生で、(幼稚部から数えると10年生という呼び方になるそうです)将来は数学の先生になる事を目指している方が、発表をしてくれましたのが印象的でした。

とてもおちついていて、分かり易く話していて、生徒さんではなく、説明会担当の先生なのではないか、と思ったくらいですが

それはさておき、

内容は、「スポーツの医療にメンタルケアも含めるべきかどうか?」といった、現代における問題点からとても関心の高いテーマであり、国際テーマにおなりますが

これをご自身なりに展開されていました。

おそらく多くの学校では、とりわけ高校では文系と理系にわかれてカリキュラムがあるので、この10年生のケースでいえば、(数学の先生になりたい方なので)理系に進むという事になると思います。

しかし、理系の考え方だけにはとどまらないテーマ、考え方で物事を見ていく力が備わっていくと、人間的に豊かでいられる、ということでしょう。

文系なのか、理系なのかに偏らずに苦手も含めて、いろいろな科目に取り組んでいけるのがいいと思います。

すぐに生かすことができなくても、大学や、社会で必ず役に立つような、自分が決めたテーマについて、文献を参考に調べて、自分の考察をして発表していく。

そのような機会を増やして行くことがいいのだと感じます。

まとめ

小原國芳が生涯をかけて訴えた「全人教育」とは、知識だけではなく “人として豊かに生きる力” を育てる教育でした。

AIやグローバル化が進む今の時代、単に知識を詰め込むだけでは子どもたちは幸せに生きていけません。

協調性、感性、身体の健康、社会に役立とうとする心――。

それらを伸ばすことこそが、未来を切りひらく力になるのです。

親としても、成績や受験だけにとらわれず、「人間としてどんな成長をしてほしいか」という視点を大切にしたいですね。

小原國芳の掲げた理想は、100年近くたった今でも、子育てや教育を考えるうえで大きなヒントを与えてくれます。

👉小原圀芳が教育にはいったきかっけをつくった澤柳政太郎(成城学園創立者)については、こちらの記事で書いています。

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